交通事故Q&A
【治療費について】
- 保険会社から治療費の打ち切りを打診されているのですが、まだ痛みが残っています。
- 一般に、打撲や捻挫の場合には3ヶ月~6ヶ月ほどで保険会社から治療の終了を打診されることがあります。主治医と相談し、治療を継続した方がいいという場合は、その旨を保険会社に伝え、交渉すべきです。仮に保険会社から治療費が打ち切られた場合には、健康保険に切り替え、自己負担分のみを支払うことで通院を続ける方法もあります。
- 鍼灸院やマッサージに通った分は、治療費として支払ってもらえますか?
- 鍼灸やマッサージについては、医師の指示がなければ認めないという扱いをされることが多いといえます。医師に鍼灸治療が必要である旨の診断書を書いてもらい、保険会社と交渉するのが良いでしょう。
【入院に関する諸費用について】
- 入院するにあたり、日用品の購入などの費用が掛かりました。相手に支払ってもらえますか?
- 入院する際には、寝具や洗面用具など細かな費用がかかりますが、これを全て計算するのは煩雑であるため、入院1日当たり1500円程度が定額で認められることが多いです。これよりも多くかかった場合には、それが相当であることの証拠として領収証等を残しておくべきです。
- 家族が仕事を休んで入院に付き添ってくれましたが、何らかの補償がしてもらえますか?
- 家族が付き添うことについて医師の指示がある場合や、被害者の年齢(幼い子供や高齢者の場合)、怪我の程度からみて付き添いが必要であるという場合には、付き添い費(1日6500円程度)が認められることがあります(逆に、そのような必要性がなく、「心配なので付き添った」という程度では認められません)。また、近親者の付き添いに、休業損害相当額を参考に付き添い看護費用を認めた事例もあります。
【通院に関する費用について】
- 自家用車で通院した場合には、交通費は支払ってもらえないのでしょうか。
- 自家用車で通院した場合でも、ガソリン代を通院交通費として請求することができます。自宅から病院までの距離を計測し(インターネットのルート検索サイトを使うと便利です)、1キロメートルあたり15円で算定するのが一般的です。
【慰謝料について】
- 保険会社から提示された慰謝料の額が、適切なのか自分では判断がつきません。
- 保険会社から提示される慰謝料の額は、保険会社が独自の基準で決めているものであり、裁判で認められる基準よりも低いのが一般的です。保険会社からの提示があった場合には、一度法律相談をされることをおすすめします。
- 買ったばかりの大切な新車に傷をつけられて、本当に悔しいです。修理費用を払ってもらっただけでは納得できませんので、慰謝料をとることはできますか?
- 残念ながら、原則として物的な損害に対する慰謝料は認められません。一般には、財産上の損害が賠償されれば、精神的苦痛も慰謝されたとみられるためです。物損で慰謝料が認められるのは、ごく例外的なケースに限られるでしょう。
【休業損害について】
- 事故に遭った後、年次有給休暇を取得して通院したので、実際には給料が減ったということはありませんでしたが、休業損害を請求できますか?
- 有給休暇は、労働をしなくても給料がもらえるという財産的権利です。本来は、自由に使えるはずであったこの権利を、治療のために使わざるをえなくなってしまったのですから、有給休暇を取得した分を休業損害として認めるのが一般的な考え方です。
- パートと家事をしている兼業主婦ですが、交通事故で怪我をしてパートを欠勤し、家事も出来なくなってしまいました。パート収入は月5万円ほどですが、パート収入しか休業損害として補償されないのでしょうか。
- 兼業主婦の場合には、現実の収入額(パート収入)と女性労働者の平均賃金(家事労働分)のいずれか高い方を基準に休業損害を算定します。月5万円であれば、女性労働者の平均賃金よりも低いため、平均賃金を基準に休業損害が算定されます。ちなみに、専業主婦の場合は、女性労働者の平均賃金額を基準に算定します。
【後遺障害について】
- まだ痛みが残っているのに「症状固定」といわれてしまいました。「症状固定」とはなんですか。
- 怪我を治療しても、それ以上良くならない状態を「症状固定」といいます。症状固定後は、治療をしても良くならないということが前提ですから、症状固定後の治療費は、原則として賠償の対象となりません(治療をしなければ良くならないだけでなく、悪化するという場合には、認められることもあります)。症状固定後も残存している症状については、後遺障害として補償を求めていくこととなります。
- どういった場合に後遺障害が認められるのですか。
- 交通事故の場合には、残存している症状が後遺障害といえるのか、また、後遺障害があるとしてその程度はどのくらいかを判断する機関(損害保険料率算定機構)があり、この機関で、後遺障害の等級(1級~14級)の認定を受けることが、後遺障害の賠償を求める第1歩です。裁判上、等級の認定を受けていなければ絶対に後遺障害の損害が認められないというわけではありませんが、認定を受けることで保険会社との交渉や裁判での主張が容易になります。逆に、等級認定が受けられないと、その後の損害賠償請求が難しくなるといえます。
【物損について】
- 事故で故障した車が、かなり古いものだったため、「経済的全損」と言われてしまいました。どういうことでしょうか。
- 経済的全損とは、簡単に言うと、その車の時価よりも修理費用の方が上回ってしまう状態のことです。(車自体は古いので30万円の価値しかないが、修理すると50万円かかるという状態)。この場合、相手に請求できる損害額は、修理費用ではなく、時価額となります。ただし、時価額だけを払えば同じクラスの中古車を購入できるというわけでもないため、時価額に買い替えのための費用(登録、車庫証明、廃車等のための費用)のうち相当額が損害として認められます。
- 車を修理している間、代車がないと通勤ができないのですが、レンタカー代も相手に支払ってもらうことができますか。
- 修理や買い替えのために必要な相当期間中に使用した代車については、損害として認められます。認められる期間は、修理の場合は1~2週間、買い替えの場合は2週間~1ヶ月程度が一般的です。
【加害者になってしまった場合】
- 交通事故を起こしてしまいました。今後、どのような責任を負うことになるのでしょうか。
- 加害者が負う責任には、①刑事上の責任②行政上の責任③民事上の責任の3つがあります。刑事上の責任は、業務上過失致死傷罪等の犯罪として罰金、懲役などの刑事処分を受けるかどうかという話です。行政上の責任は、免許取消や免許停止などの処分のことです。民事上の責任は、被害者に対する損害賠償責任です。
【過失相殺について】
- 車をぶつけられましたが、相手の保険会社が、私にも3割の過失があると言ってきます。私も多少不注意なところがあったので、1割くらいは悪かったと思いますが、3割というのはとても納得がいきません。
- 被害者にも過失がある場合には、「過失相殺」といって、支払うべき損害額から被害者の過失割合に相当する額が引かれることになります。(例えば、加害者の過失が7割、被害者の過失が3割で修理代が50万円の場合には、加害者は35万円を支払えば良いこととなります。)過失の割合がどのくらいになるかは、事故の類型ごとに蓄積された裁判例を基に一般的な基準として示されているものがあります。しかし、個別の事情によって修正される余地も十分にありますので、一度法律相談されることをおすすめします。
- 後遺障害等級認定の申請は、被害者からもできるのですか。
- 後遺障害等級認定の手続きは、相手方の保険会社に任せる方法(事前認定)と、被害者が自ら申請する方法(被害者請求)の2通りがあります。事前認定の場合は、保険会社が書類等を揃えてくれるので手続きが簡単であるというメリットがある一方で、保険会社が顧問医の意見書等を提出することで等級を低くさせようとする場合があるなどのデメリットがあります。被害者請求の場合には、ご自身で集めなければならない書類も多く、手間がかかるというデメリットがある一方で、上で述べたような保険会社に有利な意見書等を出されるのを防ぐというメリットがあります。